優秀な人から順番に辞めていく組織(会社)について
- 優秀な人間から順番に辞めていく組織
- 金銭的報酬
- 夢と希望
- 夢や希望はどこからやってくるのか
- 夢が冷める瞬間
- 冷めぬ夢はあるのか
- 夢を見せ続けられない組織とその原因
- 貢献に対する報酬
- 献身に対して与えられるべき報酬
- 最後に
優秀な人間から順番に辞めていく組織
あるよね。先Qはあの人、今Qはあの人。採用した人間が必ずしも優秀な人材に育つわけではない点を踏まえるに、組織の弱体化が絶賛進行中。従業員の士気は低く、諦めと無関心が薄い膜を張っている。
人材の定着しない組織の多くは、優秀な人材が定着しない企業だと思う。
ではなんで優秀な人間から辞めてしまうのか。それを知るには、人が働く動機を考えてみる必要がある。優秀な人がその企業で働き続けたいと思えば人材は流出しないわけで、そこのなんでを考える。
金銭的報酬
人が働く理由の多くは金銭的報酬の獲得だろう。早い話がお金だ。わかりやすい。従業員が充分な額の給与を手にできるということはその人にとってとても大切なことだし、その職場に留まる理由にもなり得る。
ただし、企業が優秀な人材を獲得し継続的に雇用できるかどうかを決める上で、金銭的報酬の多寡は決定的な要因にはならない。なぜなら金銭的報酬は企業が継続して雇用したい従業員に対して提示できる最も安易な条件であり、次の瞬間にはその普遍性故に競争に晒されて優位に立ち続けるのが困難だからである。優秀な人ほどあっという間に引き抜かれていく。
夢と希望
金銭的報酬に依らずその企業に残っている優秀な人を見るに、在籍を続ける理由としてその企業で何を成し遂げられるのかが大きな要因を占めているように思う。上場して社会的に認められたい、特許で世界を変えたい。企業が従業員に見せる何らかの夢や希望が企業と従業員を結びつけている。もちろんお金も大事だけど。
夢や希望はどこからやってくるのか
結論、誰かが絵を描いている。社長かも知れないし、共同創立者かも知れないし、役員かも知れない。夢を描く人がいて、わかりやすいメッセージにする人がいて、社内外に発信する人がいる。(この辺はまた別で書きたい)メッセージは明確なほど良いし、大きいほどメッセージとして一見評価されやすい。そこに感じる希望を拠り所に優秀な人材が集まり留まっている。
夢が冷める瞬間
陳腐さ、その一言に尽きる。上層部が描く夢の実現不可能性、軽薄さに気づいた時が夢から冷めるときだ。無論優秀な人材ほど夢が冷めるのは早い。先回りして気付いてしまうからね。
冷めぬ夢はあるのか
冷めぬ夢自体はある。だけど、冷めぬ夢を見せ続けられる組織は少ない。ここが肝。組織が往々にして抱えるジレンマはここに集約されている。
夢を見せ続けられない組織とその原因
夢の内容はその描き手に一任されている。そして描き手は前述したように組織のトップや部門のトップだ。
また、絵空事ではない夢を描き出すのは容易ではない。外部環境と自社のポジションを鑑みながら、非連続に見せかけつつロジカルな重み付けがなされた夢が求められているのだから。つまり夢の描き手には、外部環境の変化を予測し、自社の強みを正確に把握して積み上げ高を見積もりながら、あたかも非連続な成長であるかのように目標を演出する能力が求められることになる。(少なくともここまでやってくれないと自分は一瞬で飽きるし、冷めるし、辞める。)
ここでのポイントは、組織のトップや部門のトップが夢を描くという点だ。そしてここでの問題は、夢を描く能力に応じて夢を描くポジションが与えられていない現状が浸透しているという現実だ。
もう一度言う。 ここでの問題は、 夢を描く能力に応じて、 夢を描くポジションが与えられていない現状が、 浸透しているという現実だ。
貢献に対する報酬
身の周りにいる部長や役員を想像してほしい。どのようにその役職に就いているだろうか。
・過去の組織の成長に多大な貢献をした ・事業開始時からリスクを取って(貢献の度合いはともかく)組織に所属をしている
のいずれかに該当しないだろうか。いずれも、個人の献身に対して組織が役職(≒権限)で応えている形だ。ありがちだし、見方によっては当たり前にも見える構図だ。
ただ、ここまで述べてきたことと並列で考えると、この「献身に対して役職で応える」という形は、組織が取るべき手段として正しいとは言えない。結局のところどのような経緯であれ組織のトップは夢の描き人になるわけだし、夢を描くには未来を見据えてロジカルに計算をして演出というスパイスを加えられる能力が求められるわけで、そんな夢の描き人が過去の貢献によって選ばれる状況が正しいとは言えないからだ。とくに変化の激しい業界においては、役職者を決定する要因における過去の貢献が占める割合は、ほとんどの企業で大きすぎると思う。
献身に対して与えられるべき報酬
その場限りのインセンティブ的な報酬が望ましい。一度清算をを済ませて、翌期はまたヨーイドンが望ましい。ただ、過去の貢献に対して役職を決定することそのものが全て悪だとも思わない。全体として、過去も貢献してきたしこれからも貢献できるであろう人が率いる組織は問題ないし理想だと思うし、直近の貢献を根拠に未来の貢献を予測するのは正しい手法だ。
会社が苦しい時に頑張ってくれただとか事業の立ち上げで苦労してくれたといった、個人の貢献に対して組織が負い目を感じないためにも、一時的な報酬については見直した方が良い企業が多いと思う。安易に役職で応えることは、将来的に組織そのものの非成長を生む可能性がおおいにあるのだから。
最後に
過去の貢献に依存しない人事決定のあり方や、適切なインセンティブ設計についてはまた書きたい。
ちなみに、文中で夢の描き人として思い浮かべていたのはスティーブジョブズ。